そのまま送っても無線通信では届かない

実際のケーブルなどに頼る必要のない無線通信の乗り物として電磁波がある、ということを前章では述べました。

この章と次の章では、この「乗り物」という意味をもう少し突っ込んで考えてみましょう。

たとえば「1010001011」という信号を送る場合を考えてみましょう。

有線通信の場合、送信者と受信者の間で実際にケーブルがつながっているのですから、話は簡単です。

たとえば「0」は接地電位で、「1」はそれより5V高い電位と決めておき、また各ビットの信号を1秒間継続すると決めておけば、あとは送信者側で+5、接地、+5、接地、接地、接地、+5、接地、+5、+5。

という電位を各1秒ずつケーブルに流せば、それを受信者は検出できるはずです。

もちろん実際問題としては、信号開始をどう伝えるかとか、通信距離が非常に長い場合に大丈夫か、といったことを考えなければなりませんが、基本的には流したい情報をそのまま流せばよいのです。

では無線通信でも、同じように電位の時系列を、そのまま電磁波として出せばよいのでしょうか。

世の中に送信者と受信者しかいないのなら、それで通信はできるはずです。

もちろん送出する電磁波は、通信距離から考えて十分に強いものとしてです。

しかし実際には送信者と受信者は、複数いると考えるべきです。

もしある送信者Aが「1010001011」すなわち+5、接地、+5、接地、接地、接地、+5、接地、+5、+5。

を送るのと同時に、別の送信者Bが「1101000101」すなわち+5、+5、接地、+5、接地、接地、接地、+5、接地、+5。

を送ったとすると、それが単純に加算されると次のようになります。

+10、+5、+5、+5、接地、接地、+5、+5、+5、+10。

もはやここから、それぞれの送信者の元の信号を復元することはできません。

たとえばAの送りたい信号が「1011001011」でBの送りたい信号が「1100000101」だった場合でも、加算結果は同じになってしまうからです。

すなわち物理的なケーブルで直接つながっておらず、空間という人類の共通資産を使って送る限り、単に送りたい内容をそのま送ればよい、というわけにはいかないのです。

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