特定の正弦波を抜き出すフーリエ変換
前章ではsin2x+sin3xという関数が形作る曲線を示しました。
しかし実際の空間を飛び交う電磁波には、周波数が2つどころではなく、おびただしい数の正弦波がひしめきあっています。
すなわちきわめて複雑な波形が形成されています。
本当にそんな中から、特定の周波数の正弦波だけを抜き出すことができるのでしょうか。
実はそれを行うための処理が、フーリエ変換と呼ばれるものです。
たとえば時間を独立変数とする関数を考えましょう。
といっても不自然な不連続関数ではなく、複雑な形状ではあるがなめらかなカーブの関数です。
話を簡単にするため、独立変数はある区間(定義域)に限定されているものとし、その区間の左端と右端とでは同じ値をとるとします。
こういった関数は、実はさまざまな周波数(周期)の正弦波の和として表現できるのです。
さまざまな周波数というのは、周波数ゼロ(一定値関数)から始まり、定義域の長さを周期とする周波数、その2倍、3倍、4倍、5倍...という具合です。
もちろん個々の正弦波の振幅は異なります。
よほどへそまがりの関数(曲線)を除けば、どんなものでも正弦波の和として表現できる。
これだけでも驚きですが、いわば構成要素となっているそれぞれの正弦波がどれだけの振幅を持っているかも、最初の関数から比較的簡単な計算でわかってしまう。
これがフーリエ変換の素晴らしいところです。
定義域は実は無限に広くても構いません。
この場合、構成要素の周波数も、とびとびの値ではなくべたっと広がることになります。
この時、時間軸で定義されたある関数f(t) には、角周波数wに対応する正弦波が含まれているのですが、その振幅はどう計算されるのでしょうか。
やや不正確な言い方にはなりますが、それを計算するのがフーリエ変換です。
あまり本質的ではない定数倍の係数を無視するなら、以下のようになります。
ただし∫は積分範囲-∞から+∞までの定積分、exp()は自然対数の底eを底とする指数関数、iは虚数単位です。
F(w) =∫f(t) * exp(-iwt) dt
このF(w)が、いわば元の関数f(t)が含んでいる角周波数wの正弦波の振幅となります。
当然ですが別のwの値に対しては、F(w)も異なった値になります。
すなわちF(w)はwの関数ということになります。
フーリエ変換は、単に特定の周波数成分の振幅を求めるというより、時間軸と周波数軸の間で、関数表現を移行していく処理ともいえます。
周波数軸での表現を時間軸での表現に変える処理を、フーリエ逆変換といいます。
このフーリエ変換を行うことで、ひしめきあった正弦波から、特定の周波数のものだけを抜き出せるわけですが、もちろん実際に上記のような数値的積分計算を実行する必要はありません。
電気的回路などで取り出すことができます。
ちなみに人間の耳の中にも、空気の振動全体の中から、音響的な共鳴を利用してある周波数成分だけを取り出す「フーリエ変換」機能があります。

